農村地域における心不全患者の、日記帳使用と生存に関する前向き研究
心不全患者の、日記帳使用と生存に関する前向き観察研究を読みましたので、振り返り。
心不全診療ガイドライン2017年改訂版において、体重測定や症状出現の記録などのセルフモニタリングは重要視されていますが、根拠が示されておらず、私自身も有効性を示した論文は読んだことがありませんでした。
http://www.asas.or.jp/jhfs/pdf/topics20180323.pdf
この論文は農村地域在住を対象とした、REMOTE-HFのサブ解析として行われた研究です。
アメリカにおける農村地域在住の人口は約20%である。
ちなみに農村地域の定義は、①Town<2,500人、②Metropolitan center<50,000人、③Open townでした。
Michael Ratcliffe, et al. ACSGEO-1, U.S. Census Bureau, Washington, DC, 2016
同じ定義を用いた、日本における農村地域在住の人口は約16%くらいです。
総務省, 住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(平成29年1月1日現在)
結構多いんですね。
僕の生まれは30,000人程度の市ですので、農村地域です。
大元のREMOTE-HFの要約はこんな感じでした。
P:農村地域在住の慢性心不全患者(614名)を3群にランダム割付すると、
I:患者教育(50分程度)と録音テープを渡すor電話でのフォローアップ群は、
C:AHA心不全冊子を渡す群と比較して、
O:死亡と再入院による複合アウトカムでは差はなかった(P=0.167)、一方死亡は有意に低かった(P=0.01)
このうち、介入群2群では日記帳使用を指導しており、この実施割合と生存に関する検討が本調査目的である。
circheartfailure.ahajournals.org
除外基準は以下の通り。
・重度の併存症(余命が12ヶ月以内の疾患)
・他の心不全疾患管理プログラムへの参加
・認知障害がある→評価方法は不明、MMSE?過去の診断?
【Study Flowchart】
研究開始3ヶ月後に実施割合を評価し、
No Use:0%
Low Use:1-50%
Medium Use:51-70%
High Use:71-90%
Very High Use:90-100%
で割付けて、研究開始2年目まで追跡した。
割付けの根拠は不明であり、逆の因果関係を防ぐことを意図していた様子。
【患者特性】
全体的に、BMI>25は74.3%、Sedentaryな生活習慣は46.3%、ヘルスリテラシーが十分は63.9%、HFpEFは50%であった。
【死亡や再入院に関するアウトカムの群間比較】
全死亡率が、No Useで27%と高く、Very High Useで10%と低い。
【全死亡を目的変数としたCOX比例ハザードモデル】
心血管死は、男性で低い(HR0.48[95%CI:0.24-0.99)。
全死亡は、High Use(HR0.51[0.30-0.89])、Very High Use(HR0.32[0.14-0.77])が低く、Sedentaryな生活習慣(HR1.65[1.02-2.60])が高い。
【日記帳使用を目的変数とした順序ロジスティック回帰モデル】
交絡因子を調整した結果、Sedentaryな生活習慣(OR0.66[0.46-0.95])が日記帳使用低減と関連していた。
【考察】
都市部における日記帳使用と臨床アウトカムの改善が関連していることは既に明らかにされている。(Eastwood CA, et al. J Cardiovasc Nurs, 2007;22:382-389.)
本調査結果、先行研究から、Settingにかかわらず、全ての心不全患者に対して、生存時間を改善するために、体重や症状を記録する日記帳使用を推奨すべきである。
【限界】
日記帳使用をする要因として、健康志向の高さを測定していないことが限界であると考える。
【感想】
健康志向の高さを客観的に測定するってどうやるんだろう?
この健康志向が交絡因子である可能性は高い。