とがめも

巨人の肩に立つ。民間病院の看護師、大学院生。すぐ忘れるので、学習置き場として

食事・生活習慣の変化と、長期間の体重増加(NEJM2011)

今回はNEJMに掲載された壮年期における体重増加に関する論文を振り返り。

WHOでは、Health topicとして肥満や過体重が挙げており、慢性疾患の主要なリスクファクターとして先進国だけでなく、途上国においても健康問題として取り上げています。http://www.who.int/topics/obesity/en/

 

私も医療従事者でありますが、私自身の体重増加が気になっています。

テレビ鑑賞が長くなることが、体重変化と正の関連を示したことは興味深い結果であった。さらに、食習慣・生活習慣の変化が、テレビ鑑賞の中間因子であること、これによりテレビ鑑賞の効果量が過小評価されていることが指摘されている。私自身の生活を振り返ると、納得させられる結果であった。

 

 

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https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa1014296

 

NEJM's Impact Factor at 2018=79.258

 

-要約

目的: 非肥満者における、多様な生活習慣の変化と長期的な体重増加について、独立した関係と相加的な関係を検証すること

Design: cohort study

P: NHSⅠ・Ⅱ、HPFSの3つのコホートから、合計120,877名(包含率:41.0-43.8%)

E: 20年間の経過観察

C: none

O:1,570,808人年観察した。

*4年毎の体重増加率は2.4(5% to 95%タイル値:-3.0 to 8.4)%。(20年間で平均7.54kgの体重増加)

 

*食事習慣について

・体重増加と正の関連を示した要因は、ポテトチップス摂取、ポテト摂取、清涼飲料水であった。

・体重増加と負の関連があった因子は、ヨーグルト、ナッツ、フルーツ摂取であった。

 

*生活習慣が体重と独立して関連してる因子

身体活動量(5分位点当り、-0.79kg)、

飲酒(1杯/日当り、+0.18kg)、

喫煙(新規の禁煙で、+2.3kg)

睡眠(6時間未満もしくは8時間以上で、体重増加)

テレビ鑑賞(1時間/日当り、+0.14kg)

 

 

-背景

体重増加は、様々な疾患を発生する可能性が高くなる。

体重減少への挑戦は、凄まじい努力を要する。

体重増加を一次予防することが世界的に再優先事項となっている。

体重減少の研究の多くは、典型的な肥満・過体重者を対象としていることから、長期的に徐々に体重増加する非肥満者に対して一般化可能性は制限されている。

 

-対象

 

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The Nurse's Health Study(NHS)

NHSⅡ

http://www.nurseshealthstudy.org

 

Health Professionals Follow-Up Study

https://sites.sph.harvard.edu/hpfs/

3つのコホートは、全て医療職者である。

 

-方法

・登録初年度に、食事、身体活動、喫煙歴について詳細な情報を評価した。

・2年毎に、妥当性を確認された自記式質問紙を用いて、医学的既往歴、生活習慣、健康実践を評価した。

・体重評価は、2年毎の評価に併せて、質問紙を用いて評価した。質問紙の妥当性は、質問紙評価とスタッフによる測定の相関係数r=0.96、平均値の差は1.45kgであった。4年毎の体重変化量を絶対値と総体変化量として算出した。

 

-結果

・全体と対象者基本特性

1,570,808人年観察した。

4年毎の体重変化量は、+1.5(5% to 95%タイル値: -1.8 to +5.6)kg、

変化率は、+2.4(5% to 95%タイル値: -3.0 to +8.4)%。

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・食事と体重変化

体重変化と正の関連を示した要因は

ポテトチップス摂取(+0.76kg)

ポテト摂取(+0.58kg)

清涼飲料水(+0.45kg)であった。

 

体重変化と負の関連があった因子

ヨーグルト(-0.37kg)

ナッツ(-0.26kg)

フルーツ摂取(-0.22kg)であった。

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・生活習慣と体重変化

食習慣が悪さが、体重変化と正の関連した。

身体活動の多さが、体重変化と負の関連を示した。

睡眠時間は、6時間未満もしくは8時間以上が体重変化と正の関連を示す傾向にあった。

喫煙習慣は、新規の禁煙が体重変化と正の関連を示した(2.3[95%CI:1.8 to 2.8]kg)。

テレビ鑑賞は、1時間/日増加当り、体重変化と正の関連を示した(0.14[95%CI:0.1 to 0.19]kg)。

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・食事と運動の相加的な関係と、体重変化

食事と身体活動がどちらも良いDecileは、どちらも悪いDecileと比較して、2.47[95%CI: 1.8 to 3.11]kg体重が増加した。

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-吟味というか感想というか…

イアン・K・クロンビーによるコホートのチェックリストに基づいて

・正直なところ、誰を研究しているか

大部分が白人、きょうくされたアメリカ人であり、健康情報に最も近い女性看護師と男性医療職者(詳細は不明)

 

・統制群を用いているか、用いるべきだったか

統制群はない。

非肥満者を対象としたローリスクアプローチであることから、用いる必要はないと考える。

職業による体重変化の差を検証することを目的とした場合は、一般的な壮年期を対象として、第一次産業第二次産業、医療者を除いた第三次産業を層別して統制群とすることが適切か?

 

・追跡調査はどのくらい適切か

除外基準に関する詳細な除外数に関しては、情報が公開されていない。しかし、ベースラインにおける欠損値がない者を対象としていることからコンタミや自記式体重評価によるアウトカムへの影響は小さいと考える。

観察期間は20年間であり、十分であると考える。NHSでは52.2±7.2歳→72.2歳、NHSⅡでは37.5±4.1歳→57.5歳、HPFUSでは50.8±7.5歳→70.8歳であり、壮年期の観察を観察している。

 

・デザインは適切か

生活習慣と長期的な体重変化を検証することを目的としていることから、コントロールを伴わないコホート研究は適切である。

 

・曝露/介入は正確に測定されているか

説明変数に関する評価は、妥当性のある質問紙をを用いたことが示されているが、詳細は示されていない。

 

・適切なアウトカムの尺度が見落とされていないか

目的変数は体重変化である。評価方法は、質問紙を用いている。質問紙の妥当性は、質問紙と身体測定との相関係数r=0.96、平均値の差は1.45kgと示されている。しかし、体重評価のため質問紙の妥当性に関する根拠は示されていない。

 

・分析は時間の経過を考慮に入れているか

20年を終了として、4年毎の食生活・生活習慣と体重変化について、多変量解析を用いて分析が行われている。

 

・その他、観察されたアウトカムに影響を与えたものはあるか

食習慣と摂取内容、身体活動、睡眠時間、喫煙習慣、飲酒習慣、テレビ鑑賞時間が、説明変数と交絡因子として評価されている。

婚姻関係は評価しても良いかもしれない。

 

-その他の吟味

・バイアスについて

測定バイアスは、身体測定は行われていないこと、質問紙評価で身体測定との相関係数r=0.96であることから、致命的な問題はないと推察する。但し、食事・生活習慣評価と体重評価は、それぞれの質問紙によって行われているが、これを独立しているかどうかの解釈は、わからない。

選択バイアスは、ランダム抽出でないことが問題と推察する。一方コホートの全体から、生活習慣に関する質問項目が完全でない者、一般集団である非肥満者・慢性疾患保持者を除外した壮年期を対象としていることから致命的ではないことが推察される。

想起バイアスは、2年毎の質問紙評価で、どの程度振り返って質問紙へ記載を行うかについての詳細が記載されていない。

 

 

-今後の課題

分析方法について、Table3のQuintile、Figure2のDecileによる量反応性の分析や、この分析に対する感度分析が、読めない。

1時間位でかけるようにならないものか…