とがめも

巨人の肩に立つ。民間病院の看護師、大学院生。すぐ忘れるので、学習置き場として

MNA®による栄養評価、世界的に低栄養の有病率は高い

リハビリ栄養フォーラム2017in仙台で紹介されていた栄養スクリーニングツールの、the Mini Nutritional Assessment ( MNA® )とMNA-Short Form ( MNA-SF® )を勉強したので、振り返り。

  •  まとめ
  • 背景-開発と公開
  • 低栄養の有病率は高い
  • MNA-SF®の強み
  • 2010年に、日本への導入に向けた提言が行われていた
  • では、MNA®とMNA-SF®の感度と特異度は?

 

 

 

【まとめ】

 MNA®とMNA-SF®(特に後者)は、総合的、迅速、簡便、妥当性の高い、誰でも行うことができる栄養スクリーニングと栄養アセスメントツールである。

これらのツールは、高齢者の「栄養状態が良い」「低栄養のリスクあり」「低栄養である」を区別できる。

どちらも感度と特異度が高い。

65歳以上の高齢者の2/3が「低栄養あり」または「低栄養のリスクあり」のどちらかであった。

栄養状態が悪いと生命予後が悪く、死亡率の増加に寄与している。

栄養評価ツール

 

 

 MNA®とMNA-SF®に関する資料から。

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http://www.mna-elderly.com/Proceedings_IAGG_Vellas_Sieber.pdf

 

【背景-開発と公開】

MNA®は、1991年に老年期の栄養評価ツールとして開発され、1994年に公開された。

簡易版として、MNA-SF®が2001年に公開された。

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https://www.researchgate.net/profile/Emanuele_Cereda/publication/51756362_Mini_Nutritional_Assessment/links/00b7d523a9aee1bc4b000000/Mini-Nutritional-Assessment.pdf

 

 

開発プロジェクトに参加した機関は、

 スイス・ローザンヌNestle Research Centre

 フランス・トゥールーズのthe Centre for Medicine and Clinical Gerontlogy of Tolouse

 アメリカのthe Clinical Nutritional Program at the University of New Mexicoである。

 

 

【低栄養の有病率は、高い】

全世界の65歳以上が参加した6,257件のMNAを用いた調査データに基づいたInternational Pooled Databaseを分析した結果から、

「低栄養あり」の割合は、全体としては22.8%(病院では39%、老人施設で14%、地域で6%、リハビリ施設で50%)であったと示されています。

全体の2/3が「低栄養あり」または「低栄養のリスクあり」のどちらかであった。

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【MNA-SF®の強み】

・Poor Outcomeを予期する。

栄養状態が悪いと生命予後が悪く、死亡率の増加に寄与している。

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・栄養サプリメントなどの対策への反応を示す指標である。

MNA-SFによる「低栄養のリスクあり」の高齢者(age 85±6歳)108名において、マルチビタミンサプリメント低栄養リスクに対する栄養サプリメントを含む栄養コンサルトを含む栄養コンサルトを行った介入群(51名)は、対照群(57名)、4ヶ月後の体重減少を予防し、Katz ADL indexを改善させた(介入前後比較:p<0.001、対照群間比較:p<0.05)。http://www.clinicalnutritionjournal.com/article/S0261-5614(06)00205-6/abstract→本文は有料で手に入らず…

 

・栄養状態の重要性を捉える。

MNA-SF®は、以下3点を効果的に評価する。

 ①過去に起こったことの指標としての体重減少などの異化プロセス

 ②現在の状況を示すBMIや下腿周囲長(Calf Circumference:CC)

 ③近い将来に起こり得ることの評価として食事摂取量

 

・年齢の複雑さを捉える。

例えば、疾患による異化の進行、認知症抑うつ状態による摂食機能への影響、身体不活発によるサルコペニアの状態を捉える。

 

 

【2010年に、日本への導入に向けた提言が行われていた】

「スクリーニングは“漏れなく、早期に”です。理想は入院後24時間以内で、さらに、感度と特異性が高いことがポイ ントとなります。」

「専門的な知識は不要なうえ、4分以内で迅速に行えるので、施設や在宅などで誰でも使用可能です。」以下の資料から引用

大阪大阪樟蔭女子大学大学院 人間科学研究科 人間栄養学専攻 教授 山東 勤弥氏

http://gakken-mesh.jp/info/wp-content/uploads/2011/03/1011_01.pdf

 

【では、MNA®とMNA-SF®の感度と特異度は?】

MNA®の感度は84±13%、特異度は95±4%である。

MNA-SF®の感度は79±26%、特異度は59±18%である。

どちらも結構高い。

 *1(())

【調査・実践での結語】

MNA®は、高齢者における「低栄養のリスクあり」を評価するための、信頼性の高い、二段階のスクリーニングテストである。

一段階目は、MNA-SF®で「低栄養のリスクあり」を、簡便に、迅速に、妥当性の高いスクリーニングする。

二段階目は、MNA®フルバージョンで栄養状態を評価しすること、栄養介入を促進することによく使用される。

 

 

【まとめ】

MNA®とMNA-SF®(特に後者)は、総合的、迅速、簡便、妥当性の高い、誰でも行うことができる栄養スクリーニングと栄養アセスメントツールである。

これらのツールは、高齢者の「栄養状態が良い」「低栄養のリスクあり」「低栄養である」を区別できる。

どちらも感度と特異度が高い。

65歳以上の高齢者の2/3が「低栄養あり」または「低栄養のリスクあり」のどちらかであった。

栄養状態が悪いと生命予後が悪く、死亡率の増加に寄与している。

 

 

【今後の案】

看護師の低栄養に対する認識は?

心不全における低栄養の影響

心不全における蛋白異化と身体機能への影響

心不全におけるリハビリと栄養のハイブリット

低栄養によるCoronary InterventionやEnd Vascular TreatmentのPatency

あたりだろうか。

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